あたたかい雪
あたたかい雪
身震いしながら「寒い」と漏らし、寝返りをうつ。


そうすると目蓋の向こうがわずかに明るくなり、目を刺激してくる。


不快感を覚え薄く目蓋を開くと、部屋の壁際に添えられたベッドの、ちょうど向かい側にある厚いカーテンが視界に映った。


長谷川美穂は目をこすり、そこに何やら違和感を覚えた。


カーテンの向こうには、当然窓がある。


その窓のさらに向こうから、すーっと糸を引くような、静かな気配を感じたのである。


寝惚け眼でつかの間考えた美穂は、ふとある予感がしてベッドから起き上がると、冷気に体を“もじもじ”させながら窓に近づいて行った。
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