たった一つのお願い
「そっか…そう、だったんだ…良かった…」
そして漸く彼女は晴れやかな笑みを浮かべてくれた。俺の中に何か温かいものが広がった気がした。…コレはなんと表現すれば良いのだろうか?
「理央、ありがとう。私、理央に出会えて良かった」
「俺もだ」
きっと彼女に出会わなければ、俺はずっと灰色なモノクロの世界でこの世を生きていただろう。
こんなに毎日が明るくて、こんなに毎日が忙しくて、こんなに毎日が楽しいだなんてきっと知りえなかった。
自分の中にこんな、感情があるだなんて気づけなかった。
俺は優しく春陽の頭を撫でる。
このまま、少しでも長くこうしていたかった。
たとえ1秒でも、こうして春陽の温かい体温を感じていたかった。
だけど神様というものは残酷なものでそんな時間を俺たちには与えてくれなかった。
「…おい!?春陽!?」
―――――彼女はそのまま意識を失い、病院に運ばれたのだ。