たった一つのお願い


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「おい、お前。こんな所でいっつも何やってんの?」





花壇の傍で腰かけていた私は、見るとクラスの中でもちょっと派手目な男子に話しかけられた。…確か名前は、園田龍君、だったと思う。





「見学だよ」




私は、焦りもせずに正直に告白する。
最近、眩暈が酷くて走ったり出来なくて、頭痛も日に日にひどくなっていた私は教師に反感を買いながらも見学と言う名のサボりを実行していた。

母親を早くに亡くし、仕事に明け暮れている父親には当然相談出来るはずもなく、親からの承諾も得ていないためこう何回も授業を休むとスタンドで見学者と同じように居られない。だから私はぎりぎり先生に見つからない運動場が見えるこの場所で皆の様子を見学していたのだ。


だけど、それがあだとなってしまったのか私の隠れ場所がバレてしまった。…場所変えないとなー…




「…なんで体育の授業出ないんだ?体調不良か?」



「うん」




なんで私が授業出てない事知ってるんだろう?それにこの居場所まで…こんな花壇の隅っこなんて花の世話でもしない限り気付くようなばしょではないのに。
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