たった一つのお願い


「じゃあ分かった。
そんなひねくれたお前にとっておきの情報を教えてやる」




どうせろくなことがない情報だろう。




「明日春ちゃんの彼氏が見舞いに来る。時間は夕方過ぎ。その時ちょっとでも良いから仕事抜け出して病室に来い」



「それは……」



「明日の午後は非番だろ?」




――…何故コイツは俺の予定を分かってるんだ。

この前代役をしてやった奴が俺にお詫びとして時間を少しくれた。
それが明日というわけだ。


何の因果か…全く。




「分かった。それで俺が納得出来なければやはり恋ではないと言わせてもらう」



「じゃあ、認めたら酒代奢れよ?」



「良いだろう。逆に奢らせてやる」




少し調子が変わるだけの、欲求の起こらない現象が俺は恋だと思わない。


今までの女でそんな奴は一人も居なかった。
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