ひとりぼっちの花
第壱章

飛べない天使

これはきっと偶然に偶然が重なって成るべくして成った出逢い。





噂に聞いてはいたけれど本当にあるなんて知らなかった。私の住む街から少し離れた森の向こうにある桃源郷。





その日は母さんと喧嘩をしてしまい、帰るに帰れなくなってしまった私は行く宛てもなく歩いていたのだ。気がつけば森を越えて川の前までたどり着いていた。



「あれ、私いつのまに･･･。」




見知らぬ土地に来てしまったことに些か不安を覚えたけれど、どうせ帰っても喧嘩を繰り返すだけだ



川を見渡すと川の向こうには古い民家のような長屋のような･･･とにかく見覚えのない町並みが広がっていた。まるで、この場所だけ時代に取り残されているかのような。


私の住む街にはビルがたくさんあって、携帯も普及しているから電線もたくさん通っているが、ここにはどれも見当たらない。




ﾊﾟｼｬﾝ



水の跳ねる音が聞こえて川に目を向けた。その先に見えたのは川に向かって（川を挟んだこちら側に向かって）歩く綺麗な女性だった。白い着物を身に纏い、長くて綺麗な髪を靡かせて、川の中に足を進めて･･･足を･･･進め･･･て




「わああああああああ！！！まっ、待ってくださあああああああい！！」




止まることのない女性に不安が過ぎり、私は近くの橋を渡って女性の元まで走っていた。



私の声に気付いたのかちらりとこっちを見たが足を止めることはなかった


「早まっちゃダメぇぇぇぇええ！！」



女性の動きを止めようと私は女性に向かってダイブした。
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