ミタマシズメ
シーン4.訪問
甘いクチナシの香りが漂う庭を過ぎ、ホッと一息ついてから

玄関のチャイムを押す。

「はい」

「お電話しました、糸居です」

「お待ちください」

名を告げただけでもうすでに、

喉がからからに渇いてしまったような気がした。

玄関のドアから覗いたのは、長い髪をサイドにまとめた細面の女性。

女性は微かに笑みを浮かべ、

「どうぞ。暑かったでしょう」と労いながら招じ入れてくれた。

通された和室に入ると私は『彼』とすぐ目が合った。

「今、お茶を淹れてきますね」

「あ、おかまいなく…。あの、これ…お供えさせてください」

花束を軽く差し出すと、「ありがとう」と女性はまた微笑み

「花瓶に挿して参りますね。どうぞお座りになってお待ちください」

と部屋を後にした。

『彼』の写真を、じっと見つめる。

目礼をして、ひとまずテーブルの端の座布団に座った。

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