海賊王子ヒースコート(1)
第二話:懐かしい温もり




 崖の下にいた海賊船ブラックエンジェル号は薄闇の中を静かに移動し、クオーツ島の小さな港付近まで近づいていた。


「おーい、キャンディス。もうすぐ飯できるんだけどさ、船長達まだ戻らないか?」


見張り役として甲板に出ていた仲間、キャンディスに、ロディはおたまを振りつつ声をかけた。


「ん~。まだ、みたいね」

キャンディスが双眼鏡で陸を眺めながら答える。


穏やかな風が「彼女」の長い赤茶色の髪をなびかせた。

「彼女」。

そう、キャンディスはれっきとした女性である。


淑女のアイリーンとは違って、豊満な胸を惜しみなくさらけ出すような装い。

スリットの入ったスカートにロングブーツ。


そのような格好でクレマン海賊団の一員として役目をこなす紅一点。


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