「え…?月のものが…遅れてる?」


山姫の部屋でお茶菓子を食べながら頷いてのほほんとしている息吹とは裏腹に、山姫は口をぽかんと開けて動揺を隠せずにいた。

妖と人との間に子は出来にくいが…主さまと息吹はまだ新婚ほやほやだ。

もし妊娠したとするならばそれは奇跡に等しく、またかねてから2人が子供を切望していたのだが…妊娠は容易なことではない。


「今月色々あったから遅れちゃってるみたいなの。いつもはちゃんと同じ日にぴったりくるのに。きっと環境の変化のせいだよね」


「そ、そうなのかねえ。あたしは…違うと思うけど…」


「え?どういう意味?」


妊娠しているかもしれない、などとは夢にも思っていないらしく、きょとんとしている息吹に今自分がそれを伝えるべきかどうか…

もし間違いだったとすれば、主さまと息吹をぬか喜びさせる結果になるかもしれないのだ。


「どうなんだろうねえ、遅れてるだけなんじゃないのかい?…ちなみに晴明にはこのこと話したのかい?」


「ううん、最初は父様に相談しようと思ったけど母様の方がわかってくれるかなって思ったから」


「ああそれは正解だね。いいかい息吹、このことは誰にも言うんじゃないよ。あんたの体調が狂ってるって知ったら異常に心配する連中がここにも平安町にも多いだろうからね」


山姫に頭を撫でられて嬉しそうに頷いた息吹は、一緒に山姫の部屋を出て縁側に戻った。

腹巻も完成したし、そろそろ主さまと言葉が交わせないというのも気持ちの限界にきている。


どうして言い訳をしてこないんだろう、と考えながらお茶を啜っていたが――よくよく考えれば主さまは言い訳がましい男ではないし、自分の気持ちの整理がつくまで待ってくれているかもしれない。


「でももうちょっと父様と一緒に居たいな。主さまなんか焦らして焦らして焦らしまくってやるんだから」


息吹はいつものように雪男と談笑していたが、戻って来た山姫の様子が少しおかしいことに気づいていた晴明は、敢えて山姫に話しかけずに縁側で若葉を膝に乗せてあやしていた。

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ファンタジー  妖怪    男目線  切ない  溺愛  きゅんきゅん 

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