主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
敷物と同じ赤い真っ赤な着物を纏った周が扇子をずらして目の前に座った息吹を頭のてっぺんからつま先まで何度も上下に見つめた。
品定めされているのだと感じた息吹は正座をして、ひざの上で握りしめた拳が真っ白になるまで握り締めてしまい、周にこそりと笑われる。
「これはがりがりで貧相なのが来た。わたくしが想像していたのとは全然違う」
「あ、あの……申し訳ありません…」
「…だが…わたくしの好みじゃ。もっと近う寄りなさい」
「え?あ、あの…」
否定されたと同時に肯定もされて混乱した息吹が目を白黒させると、周は扇子をぱちんと閉じて全貌を晒した。
瞳は切れ長の三白眼で、驚くほど睫毛が長い。
長い黒髪は頭の上で何度も緩く巻き付けられていて、鼻梁も高くてすっとしているし、ふっくらとした唇が綺麗で、大人の女性の魅力にあふれている。
見惚れてしまった息吹がぽかんとしてしまうと、周はまた扇子をぱちんと鳴らして息吹を我に返らせると、息吹は慌てて段差に上がって周の隣に座り直した。
「ふむ…近くで見るともっと痩せておる。あの晴明の養女だとか。ならば教養は身についておろう」
「父さ…晴明様には幼い頃から琴や舞いなど稽古をつけて頂きました。あの…周様…」
周は段差の下でどこかはらはらした表情で見上げてきている主さまのあまり見たことのない表情に唇を吊り上げて微笑み、どこか官能的な手つきで息吹の頬を撫でた。
「周様などと他人行儀な呼び方は好きではない」
「じゃあ…お義母様とお呼びしても…いいですか?」
緊張と不安で瞳が揺れている息吹に興味津々の周は、息吹の背中をとんと押してまた扇子を開くと顔を隠した。
「それでよい。後でわたくしのところへ1人で来なさい。約束を忘れるでないぞ」
「母上、息吹をどうするつもりで…」
「悪いようにはせぬ。そなたの嫁なのじゃ、腹を割って話をしたいと思うのが親心。そうであろう?」
主さまは母親に反抗できないのか、反論もせずにまた頭を下げて、降りてきた息吹の手を取ると出入口でまた一礼をして部屋を出た。
「周よ、息吹姫をどう思った?気に入った風だったが」
腕を組んで壁に寄りかかっていた潭月がにやにやしながら問うと、周は目だけで笑ってこそりと囁いた。
「気に入った。早う親しくなって、あれをやきもきさせたい」
――主さまの両親は、両方とも曲者だった。
品定めされているのだと感じた息吹は正座をして、ひざの上で握りしめた拳が真っ白になるまで握り締めてしまい、周にこそりと笑われる。
「これはがりがりで貧相なのが来た。わたくしが想像していたのとは全然違う」
「あ、あの……申し訳ありません…」
「…だが…わたくしの好みじゃ。もっと近う寄りなさい」
「え?あ、あの…」
否定されたと同時に肯定もされて混乱した息吹が目を白黒させると、周は扇子をぱちんと閉じて全貌を晒した。
瞳は切れ長の三白眼で、驚くほど睫毛が長い。
長い黒髪は頭の上で何度も緩く巻き付けられていて、鼻梁も高くてすっとしているし、ふっくらとした唇が綺麗で、大人の女性の魅力にあふれている。
見惚れてしまった息吹がぽかんとしてしまうと、周はまた扇子をぱちんと鳴らして息吹を我に返らせると、息吹は慌てて段差に上がって周の隣に座り直した。
「ふむ…近くで見るともっと痩せておる。あの晴明の養女だとか。ならば教養は身についておろう」
「父さ…晴明様には幼い頃から琴や舞いなど稽古をつけて頂きました。あの…周様…」
周は段差の下でどこかはらはらした表情で見上げてきている主さまのあまり見たことのない表情に唇を吊り上げて微笑み、どこか官能的な手つきで息吹の頬を撫でた。
「周様などと他人行儀な呼び方は好きではない」
「じゃあ…お義母様とお呼びしても…いいですか?」
緊張と不安で瞳が揺れている息吹に興味津々の周は、息吹の背中をとんと押してまた扇子を開くと顔を隠した。
「それでよい。後でわたくしのところへ1人で来なさい。約束を忘れるでないぞ」
「母上、息吹をどうするつもりで…」
「悪いようにはせぬ。そなたの嫁なのじゃ、腹を割って話をしたいと思うのが親心。そうであろう?」
主さまは母親に反抗できないのか、反論もせずにまた頭を下げて、降りてきた息吹の手を取ると出入口でまた一礼をして部屋を出た。
「周よ、息吹姫をどう思った?気に入った風だったが」
腕を組んで壁に寄りかかっていた潭月がにやにやしながら問うと、周は目だけで笑ってこそりと囁いた。
「気に入った。早う親しくなって、あれをやきもきさせたい」
――主さまの両親は、両方とも曲者だった。