主さまと夫婦になったら毎日起きて帰って来るのを出迎えよう――


そう決めていたのだが…さすがに無理が生じ始めていた。


「……き、息吹…起きろ」


「ん……主しゃま…」


「!!ね、寝ぼけるな!もう昼だぞ、花の水遣りはどうした?」


息吹が小さな頃うまく発音ができずに“主しゃま”と呼ばれていた主さまが顔を赤くしながら爆睡している息吹の肩を揺すると、はっとした息吹ががばっと起き上がった。

だがまだ寝ぼけているのか目の焦点が定まらず、うにうに動いている赤子をぼーっと見つめた後、ゆっくりと主さまを見た。


「…お昼…?」


「そうだ。若葉の乳はどうした?花は?雪男と水遣りをするんじゃなかったのか?それにそろそろ晴明が来るはずだが」


寝乱れた息吹の白い浴衣の胸元からはちらりと胸の谷間が見えていて、慌てて目を逸らした主さまは夏場にも関わらず羽織を引き寄せて息吹の肩にかけた。

晴明という名にようやく意識が覚醒したのか、脚をもつれさせながら襖を開けると、庭には雪男と庭で談笑している晴明が立っていた。


「父様!ご、ごめんなさい、寝坊しちゃった!雪ちゃんごめんね、花の水遣り…!」


「俺がやっといた。ぷっ、お前頭ぼさぼさだぞ、ちょっと鏡見て来いよ」


「やあ、これは可愛い頭をしているね。また寝ていなかったのかい?そんなことでは身体を壊してしまうよ」


「本当は朝起きて花にお水をあげて朝餉を作ってお掃除もする予定だったのに…」


「それは欲張りというものだ。さあ顔を洗ってきなさい。私は十六夜に話があるから、山姫が作った昼餉を食しておいで」


「は、はい。ごめんなさいっ」


息吹が草履を履いて井戸の方へ駆けて行くとその後を小さな雪男がちょこちょこと追いかけ、残った主さまはちろりと晴明に睨まれて、身を竦めた。


蛇に睨まれた蛙ならず、狐に睨まれた鬼。


「さて…私が言いたいことはすでにわかっているようだが、どうしようかねえ。どうしていじめてくれようか」


「…俺が起きていろと言ったんじゃないぞ、あいつが勝手に…」


「勝手に?これはなんとも図々しい発言だねえ。あの子は人なのだよ。朝起きて夜眠る…それが自然なのだ。そなたから重々言い聞かせてもらおうか」


「…」


夫婦になってからはさらにお小言が連発。

やはり晴明は…強者だった。

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