“ずっとずっと不自由だった”――

その言葉は息吹の胸にひっかき傷を残し、表情を曇らせていた。

半妖の扱いは、妖にとっても人にとっても良い影響はもたらさない。

ましてや両方の血が混じっているのだからどっちつかずで、時に妖の血が暴走して人を襲うことも無くはない。

故に半妖というだけで迫害されて、山野をさ迷った挙句――野垂れ死にすることもあるという。


「……」


「…息吹…どうした?」


「半妖って…つらい思いばかりするの?雪ちゃんも…つらい思いをしてきたのかな」


「…両親に愛されれば周囲の迫害など気にならない。望んで生まれてこなかった者たちは大抵迫害されるが、息吹…お前…何を考えている?」


買い物を終えたら村を一周して散策しようと言っていたのに、息吹は俯いたまま踵を返して屋敷の方へととぼとぼとした足取りで向かう。

主さまはすぐに追いついて隣に並ぶと、息吹の肩を少し強く掴んで立ち止まらせる。

息吹が不安に感じているものの正体に、すぐ気付いていた。


「俺との間に生まれる子が迫害されるとでも思っているのか?」


「…主さまも…望んでくれてるんだよね?私との赤ちゃん…愛してくれるよね?」


扱く当然のことを聞かれると、何故そんなことをと思って言葉を詰まらせる。

息吹は縋るような視線で見つめてくるので、つい噴き出した主さまは、大きな手で口元を覆って肩を揺らして笑った。


「ひどい!今私真剣なのに!」


「突拍子もないことをお前が言うからだ。俺とお前の子は百鬼夜行を継ぐ者になるんだぞ。俺はいずれ跡目を継がせて隠居してゆっくりしたいんだから、子を望まないはずがない。もし迫害されたとして心が折れるような弱い奴ならば、俺が性根を鍛え上げてやる。それでどうだ」


いつもはこんな風に饒舌ではない主さまが沢山話してくれたので、心配してくれているのだとすぐに気付いた息吹は、主さまにぺこりと頭を下げた。


「また弱音吐いちゃってごめんね主さま。半妖っていう立場がその子の足枷にならないかなって思ったら不安で…」


「まだ腹に何も入っていないのにもうそんな心配か。お前は親馬鹿になりそうだな。…まあ、お前の傍には相当な親馬鹿が居るが」


「父様のこと?うん、主さまにも父様みたいになってほしいな。強くてかっこよくて優しい父様に」


元気を取り戻した息吹と肩を寄り添い合って屋敷への丘を上る。

…その様子を一部始終余すことなく、潭月は見ていた。

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