必ず昼寝をする息吹の傍に姿を消して座っていた主さまは、時々寝返りを打たせて体勢を変えてやると、飽きもせずにずっと息吹の寝顔を見ていた。


はちきれんばかりに大きな腹――

今にも産まれてくるのではないかと思わせるほどに大きくて、元々細い息吹の身体にまるで大きな瘤でもできているのではないかと思ってしまう。


「…息吹……」


声をかけると僅かに睫毛が動いた気がした。

顏の横に添えられていた手にそっと触れると、赤子のようにきゅっと指を握られて固まってしまった。


…息吹が小さな頃は、添い寝をしてやらないと寝ない駄々っ子だった。

いつも指を握ってどこにも行かないようにする癖は今も健在らしく、肩まで掛け布団をかけてやろうとすると、息吹が何事か小さく呟いた。


「…………ま…」


「……?」


むにゃむにゃと口を動かしている息吹に顔を近付けると、今度は鮮明に聞こえた。


「主、さま……傍に……居て…」


ぎょっとすると共に、姿を消して傍にいることを知られているのではと身を固くしたが、息吹が起きる予兆はない。

気丈に振舞ってはいるが――ひとりで出産などこの上なく不安で、押し潰されてしまいそうになっているだろう。


自分が息吹を裏切ってしまったばかりにこんなことに――


「……必ず守る。お前も、子も……酒呑童子に触れさせはしない」


息吹の腹に手を伸ばしてそっと触れると、大きく動いた。

今にも腹を破って産まれてきそうなほどに大きな反応を見せた我が子と、ここまで慈しんで守ってくれていた息吹に無限大の愛しさを感じつつ、もうこんな生活は嫌だと本音が出てしまいそうになる。


「全てが済んだら、ちゃんと話をする。息吹…それまで待っていてくれ」


願をかけて、息吹の額に口づけをした。



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