「源義経…だと?」


「うん。今度相模が帝になるらしくて、頼朝さんと義経さんが相模に協力するんだって。それでね、義経さんに風で飛んだ風呂敷を拾ってもらって……主さま聞いてる?」


まだ膝に乗ったままの息吹は、むすっとしたままの主さまの両頬を引っ張って関心を引くと、ぷうっと頬を膨らませた。

…こういう反応をすることは予想できていたが、いつも妖に囲まれて過ごしている息吹は、人との出会いに飢えている。

特に相模と関係があるのならば、今どういう状況にあるのか聞いてみたいし、興味がある。


「…聞いている。では武蔵坊弁慶も来ているんだな?」


「誰それ。義経さんしか居なかったよ?主さま…義経さんを知ってるの?」


知っているも何も、鞍馬山に住む天狗たちから義経が幼少の頃から話を聞いていた。

平家を打倒して兄弟で平安町にやって来たことも知ってはいたが…まさか息吹と出会うとは。


「…俺も詳しくは知らない。…で?会いたいと言われてほいほい会いに行くのか」


「うん、だって面白そうなんだもん。駄目?平安町には行かないし幽玄橋の上で会うし、雪ちゃんもついて来るって言ってたから大丈夫だよ。それとも主さまも一緒に行く?」


「誰が一緒に行くものか。…勝手にしろ。俺は寝る」


主さまがこうなった時、どうすればいいか息吹は知っている。

ふてくされて床に寝転がった主さまの頭を持ち上げて膝枕をしてやり、髪紐を解いて黒くてさらさらの髪を櫛で梳いてやる。

甘え下手な主さまが普段頭では思っていても口に出さないようなことを察して先回りして叶えてやってこその、妻。


「気持ちいい?他に何かしてほしいことはある?添い寝してあげようか?」


「……ごまを擦っても無駄だぞ」


「あ、ばれちゃった?もお主さまったら甘えん坊さん。じゃあ耳掃除もしてあげる。こちょこちょ」


「や、やめろっ、くすぐったい!」


耳かきで耳掃除をしてやると、母の周にもこんなことをされたことのない主さまは真っ赤になって抵抗をしたが…にこにこ顔の息吹に気を削がれて好きにさせることにした。

…だがこれがどうしたことかとても気持ち良くて、いつの間にかうとうとしてしまい、数分後には寝息が聞こえた。


「主さま可愛い。お帰りなさい、今日もご苦労様でした」


端正だが寝顔が可愛い主さまにどきどき。

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