黒竜と魔法使い。~花檻の魔法使い~
堕竜


***



 赤竜は問う。

「なんでベルデウィウスに魔法使いの事を言ったんだ?」
華竜はそんな赤竜に笑いながら伝える。
「光竜のテリトリーの少女に、黒竜が惹かれたなんてすごいことではない?」
「?」
「光竜の潔癖もこれで直ればいいのだけど」
その言葉に、赤竜は溜息をつく。
「それはつまり、光竜に黒竜を当てたのか。争いになったらどうする?」
呆れたような困惑した声に華竜は意地の悪い笑い方で告げる。


「それはそれで――、光竜には死してもらいましょう」


その言葉に、赤竜は息をのんだ。
華竜の瞳がひどく淀んでいる。--憎しみが見える。
「………、そう言えば、お前の『契約者』ってどうしたんだ?」
竜の住む地へ華竜が現れたのは、珍しい。
人の住む地上の山地で過ごすことの多い竜がわざわローゼンフォルト家の事情を黒竜に告げに来たのだ。

何らかの、意図があり――ベルデウィウスは気づいていない。


 「殺されました―――、光竜に」

ふふふっと笑う華竜の薄桃色の鱗が鈍い色を輝かせる。
「おい!!」
その瞬間、赤竜は叫び声を上げた。
「負の感情に捕らわれると――『堕ちる』ぞ!」
その叫びに、はっと我に返った華竜は、小さく自嘲気味につぶやく。

「あの少女のシルヴィアの母親は『娼婦』ではないわ。ただ、娼婦と間違われただけよ――私がいれば、あんなことにはっ」

華竜は瞳を強くつぶり、そして―――、

「赤竜――このことは、黒竜に告げないでください――。告げるときは、私が―――『堕ちた』時でお願いします」

長い首を下げ、願う。
困る!と叫びたかった、――事実も知りたくもなった。
『光竜』と『黒竜』が争う現実も――、何もかも。


竜は世界の強者――。その強者が、憎しみ合う。
そんなことをすれば、


「世界のバランスが崩れるぞ」

「その代償がどのようなものでも―――あの子の…最期を思うと――許せいないのです」

赤竜の言葉に、華竜が小さくつぶやいた。


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