ある男女の恋愛事情

沸騰しそうなハートに、伊吹くんは照れ臭そうに横を向いて言った。



「で、あの…

抱きしめたいんだけど、いい？」


「っ」



いつもと違う。

伊吹くんがあたしを
女の子扱いしてくれている。


だってだっていつもは横暴で不器用で
あたしの頭を了解なしに触る人なのに。


そんな不安そうに聞くなんて。



「あの、…はい」



照れつつも小声で肯定すると


そーっと包み込むように
身体を抱きしめられた。


ドキドキ、なんて
言葉じゃ済まされない。


愛しいとい感情が
とめどなく溢れ出てくる。



「…あたしも、ずーっと前から
伊吹くんが好きだったよ」


「…っ」


「今も好きなんだよ」


「…ははっ、嬉しすぎて訳分かんねぇ」



そう言うと抱きしめる力を強める伊吹くん。私もそれに応えるように背中に腕を回した。


好き、伊吹くんが好き。

あの日ですら言えなかった言葉をようやく言えたんだ。