10年後も…〜song for you〜

踏み出せない想い


ひとりになると、息を吐いた。



ベンチに座り、もう一度月を見上げた。




三日月…。




三日月を見上げていると、自然と口ずさみ始めた。


「ずっと一緒にいた〜」



絢香の三日月。









思い出す記憶。


7年前…

この公園で、私と祐樹くんに自慢気に買ったばかりのギターを見せつけたアイツ…。


『どうだ!かっこいいだろ?』


目を閉じると、当時の光景が目に浮かんだ。



『なんだよ。アコギじゃん』

『祐樹〜お前分かってねーな。ギターはアコギに限るんだよ。エレキにはない、深みがあんだよ。やっぱこの音が良いんだ』

『お前、ペーペーのくせに何言ってんだ?』

『うるせー。お前より俺が絶対うめーもん』

『ふーん。じゃあ、勝負だ!この、コード出来るか?♪♪♪〜』

『ヨユー。…あ?あれ?』


『全然出来てねぇじゃん!つーか、健までなんでギターやり出すんだよ。お前は、ギターなんぞしなくてもモテるからいいだろ?』

『バカか?俺は、お前と違ってそんな不純な動機じゃねーよ』






健と祐樹くんの競い合いは長く続いた。




そんなことを思い出すと、フっと笑みがこぼれた。





この三日月も、健はよく弾いていたっけ?


健はブラックミュージックが好きで、洋楽ばかりをカバーすることが多かったけど、この三日月は私が好きな曲だから、練習して弾いてくれていた。



健…



健のギターが恋しいよ。







健の歌が聴きたい。








でも、怖いの。







健を失うのが怖い。







逢えば逢うほど、失うのが怖くなる…。








健、私はどうしたらいい?





私はただただ三日月を見上げて繰り返し口ずさんでいた。




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