恋人ごっこ

06.グロッキーな日常

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■ グロッキーな日常








今までしたことないから､わからないよ｡










居心地のいいこの場所に､危うくはまりそうになるのを必死で堪える｡




「仙崎､今月の家賃｡」


あたしは夕飯のオムライスを口に運びながら､スプーンを持ってない左手を彼に差し出した｡


「へ？」


が､彼は抜けた声で聞き返してきた｡
それに対して､あたしは少しだけ眉をひそめる｡


「へ？じゃない｡
そんな言葉はいらないの｡欲しいのは家賃｡
まだ払ってないの仙崎だけよ｡」


「や､和葉さんちょっと待って」


あたしの文句をスプーンを持ったままの右手で制する仙崎｡


「何」


「家賃って振込式じゃないの？」


「君はいったい入室日に何を聞いていたの｡」


あたしは呆れながら左手を下げた｡


「ママがいた時はそうだったけど､あたしが代理になってからは手渡しよ｡
あたし､機械は苦手だから｡」


機械の操作の覚えがあまりにも悪いため､母が諦めてこの方法にしたのだ｡



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