【単連】MEETs JUNCTION(BL含)
脱け殻は蜜に寄らず
 私は前を歩く人たちに見えないように小さく息を吐いた。


 職場の歓迎パーティーとは名ばかりで、ただ見栄を張りたいだけの女上司が、会社の経費で行き付けのホストクラブに皆を招待したのだ。

 上司の見栄に付き合うのは正直うんざりだが、安月給で普段は敷居の高いホストクラブに行けるということにはまんざらでもないようだ。

 しかし私は早く帰りたくて仕方なかった。

 ホストクラブになんの魅力も感じないからだ。

 きらびやかな繁華街に、同僚の女どものテンションは上がっていた。

 細身のスーツを着こなした軽そうな男どもが狭い道にズラリと並んで声を掛けてくる。

 上司の鼻はピノキオのように長くなっていた。

 私は本格的に気分が悪くなって舌打ちをしたが、繁華街の呼び込みで騒がしいこの場所では聞こえていないはずだ。


 目当ての店の前に付くと、上司は小さな胸を反り返して入り口の前にいる男に声を掛ける。

 同僚はキャッキャと声を上げた。

 中に入って行く上司に着いていく同僚の更に後ろを、私は重い足取りで着いていった。






「どうも、シュウです」


 胡散臭い笑顔を張り付けた不健康そうな男が、私の隣に座った。


「お名前、聞いてもいいですか?」


同僚の人たちが盛り上がるのを避け、折角端に座ったのに、更に端にシュウが来てしまったのだ。

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