SトロベリージャM
数分後、大樹の木陰に着いた。


しかし、急に実野里は何かを思いついたような表情になり、「ちょっと待っ
てて。」と言って、家に向かって走り出した。


(今日、ママがいちごをくれたんだ。だいちと一緒に樹の下で食べたい。)


しばらくして、大地に向かって、可愛い少女が走ってくる姿が見えた。


背中には、リュックを背負い、なぜか着替えまでしてきていた。


そのワンピースは薄いピンク色で、白いレースがたくさんついていて、走る度に、フワフワと揺れている。


大地が話しかけようと口を開いた瞬間、実野里がフワッと大地の胸に飛び込んできた。


「だいち、このお洋服どうかな?パパが買ってくれたの。お姫様みたい?」


そして、大地にはわざとしか思えない必殺技が、また繰り出された。


「う・・うん。みのり、お姫様みたいだよ。」


言い終えたのはいいものの、顔が真っ赤だった。


実野里は、首を傾げた。


「どうして、王子様は顔が真っ赤なの?」


「・・・」


返す言葉が見つからない。


「いちごみたいな色の王子様だね。みのり、ママがくれたいちごを持ってきたの。ママが大好きな人と食べなさいって。みのり、だいちと食べたいって思ったの。」


「じゃあ、みのりは俺が好きなんだ。」


さっきまでのシャイな大地は、微塵もいなかった。


「うん。みのりは、いちごもだいちも好きだよ。」


「女の子が男の子を好きって言うのは、恋なんだよ。」


「こい・・。こいはお魚だけど食べれないよ。」


大地は微笑んだ。


「魚じゃないよ。俺もみのりに恋してるよ。恋したらね・・。」
< 11 / 225 >

この作品をシェア

pagetop