SトロベリージャM
無事、職場に到着し、副社長室のドアの前まで辿り着いた。


(あ~!間に合った~!)


いつものようにドアを開け、中に入った。


「!?」


2人の目の前には、椅子に腰かけ、足と腕を組んだイケメンの鬼がいた。


切れ長の目は更に引きつり、整った薄めの唇は、牙が生えてきそうなほど、恐ろしい弧を描いていた。


「おや、ダイ、朝帰りとはいい度胸だな。そちらの秘書もご一緒で?」


実野里は、何も言えず、ダイも無言だった。


暫くして、ダイが口を開いた。


「無理やり、母を奪ったお前に、何も言う権利なんてないと思うが。」


社長は、苦虫を噛んだような顔をしながら、ダイに向かって言った。


「俺は、美里の愛を買った。ついでに、お前のその美貌も買ってやったというのに、親不孝者だな。まぁ、いい。その美貌と、あの土地が再び役に立つときがやってきたんだからな。悪いようにはしないさ、俺にもお前にも、更に金が舞い込んでくるだけのことさ。そこの妖精さんには、しっかり覚悟してもらっておくことだな。」


そう言って、笑いながらその場を去っていく鬼は、ドラマ撮影中の俳優のようだった。



実野里は、ただ、茫然と立っていることしかできなかった。


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