竜王様のお約束
ジュウナナ
仏頂面でいつもの白い椅子に座り窓の外を眺めているのは、豪華な白い衣装を身にまとい柔らかな銀色の髪を持つ若き一児の父であった。


窓の外を興味なさげに眺めるその漆黒の瞳には、あからさまに不満の色を浮かべている。


長い足を組み肘掛についた左手に頬を預けて、同室している他の五人には敢えて背を向けていた。


「ねぇハクリュウ、機嫌直してよ。」


広い部屋に置かれた、いつもヤヨイがハクリュウと寛ぐそれとは違うソファーの上から、ヤヨイが伺うように声をかけた。滅多に訪れることのない来客用のソファーはテーブルを囲むように配置され、三つのそれにはヤヨイとリョク、コウリュウとイオリ、コクリュウが各々座していた。


「機嫌がなんだって?」


ピクリと片方の眉を動かして振り向くことなくヤヨイの問いかけに答えたハクリュウは、優雅に足を組み替えてフゥとため息を漏らしてみせる。


「たった三年しか共に過ごせなかった可愛い可愛い我が娘を他の男の手に委ね、しかもこの天界に住まわせるだなど想像しただけでも怒りがこみ上げてくる。
リョクを天界と関わらせないように我がどれほど気にかけ尽力してきたか、ヤヨイなら察してくれると思っていたに。
あ〜!この腹立たしい事態に機嫌を損ねない父親が居るとしたら、是非会うてみたいものぞ。」


ハクリュウはそこまで言うと、一旦言葉を区切り力なく呟いた。
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