君が好き
6.あなたと見たい景色




帰りの電車でも
駅についても。

家につくまでずっと無言で。
だけど加藤はずっと、ずっと手を離さなくて。



フラれた直後だって
誰が思っただろう。


あの光景を見て
誰がそんなことを。









「ちょっと優一!」

「ん」


加藤への思いを断ち切ったのは
母さんのどでかい声。


気が付けばもう昼だったらしい。
カーテンを開けられたようで
とんでもなく眩しい光が部屋に入ってきた。



「あんた夏休みだからって毎日毎日ダラダラして」

「バイトしてんだろ」

「受験生なのよ!何考えてバイトなんて…」



受験生の夏。
勉強漬けになる予定だった。

する、つもりだった。


だけど、
やっぱり何のために大学に行くのかとか、
何がしたいのか、とかわかんなくて。

結局、勉強はなぁなぁに。
バイトにふらふら行って、
なんとなく毎日を過ごして
気が付けば夏休みが折り返し地点に入っていた。



「いいよ。
内部いくし。」

「は?なに?学部は?」

「…どっかテキトーに。
行けるとこ」



大きなため息を一つ落として出ていった母さん。






ため息つきたいのはこっちだ。


俺がしたいことは何なんだ。

将来、いったい何になりたい。

夢は?希望は?好きなことって、何なんだ。




考えなくては行けない山のような事柄。

だけど、結局
目をつぶれば
思い出すのは加藤のことばかりで。




友達になろう。

そう思ったはずが
会わない時間でも
想いは増幅していくばっかりで。



加藤は何してるだろう。

暑くってダレてないかな、なんてことばかりで。









俺が今、
なりたいものは。




加藤の彼氏だ。








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