瑠哀 ~フランスにて~
Part 2
『―――やっぱり、無理か……』


 瑠哀は溜め息をついて、橋の下を流れるセーヌ川を見下ろした。


 昨日、目が覚めたら病院にいた。あの男達が去った後、あのモーテルに泊まっている誰かが自分を発見して、救急車を呼んだ、と言う。


 打ち身・擦り傷・打撲、といった程度の傷で済んだが、落ちた時のショックで軽い脳震盪を起こしたらしい。


 本来なら、そのまま夜は病室で休まなければならないのだったが、観光していて時間がないという瑠哀に、注意書きを手渡して、気づいたら家に帰っていい、と言われ、モーテルに着いたのは夜中だった。



 ずっと、どうしたらいいか、と考えていて、ほとんど眠らずに朝が来た。



 最初の日に、ある親子を救すけた。あの男達は彼らを追っているようだが、瑠哀はあれ以来彼らに会ってない。


 どんな事情があるのかは知らないが、あの男達を見れば、あまり思わしくない事情だというのがわかる。


 もし、瑠哀がのあの場で息をしてなくても、あの男は特別に気にしなかっただろう。

 あの男は人を殺しても平気だと言う確信が、瑠哀にはある。



 薄れる意識の中で聞いたあの声は、とても冷徹だった。


 あの親子がまだ狙われていることを知らせるべきがどうか迷いながら、最初に会った場所付近のオフィスをしらみつぶしに聞いて回った。
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