瑠哀 ~フランスにて~

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「よく瑠哀を見つけたね」

「偶然、橋にいた彼女を見つけただけだよ」


 通された場所は、二階のピエールの私室らしかったが、ここにも数点の絵が飾られていた。

 正面は床から天井まである大きな窓ガラスが張ってあり、夕方の日差しをブラインドが丁度良い程度にブロックしていた。



 この採光の使い方と言い、室内の内装といい、モダン的な空間の中にもアートを感じることができた。



 ピエールはソファーに腰をかけ、前に座った瑠哀を見る。霞月は窓辺に寄りかかるようにして、ブラインドを少し開け外を眺めていた。


「ルイ、よく来てくれた。会えてうれしいよ」


 本当に嬉しいかどうかが問題だろう、と瑠哀は思っていた。

 どう見ても、嬉しい、という様子はないのだから。



「君があの後帰ってしまって、僕も反省した。

僕だけ好きにして、君を怒らせてしまったことを許して欲しい。

―――それとも、口を聞きたくないほど、僕は嫌われてしまったのかな?」

「―――あなたを嫌いになるほど、私はあなたのことを知らないから。

それに、私も初対面なのに出過ぎた真似をして悪かった、と思っています」

「僕を知ったら、嫌いになるかな?これが、僕のしていることだ」

「―――画家なの?」

「芸術家に近いな。写真・彫刻・絵画・etc.――。思い立ったら、何でもやる。今の所、絵が多いけどね」

「ピエール・デ・フォンテーヌ―――。

ミドルネームは知らなかったけれど、どこかで聞いた名前だと思ってたわ。

フランスの若きアーティスト。今世紀最後の天才、だと言われている。

幼少からその才能を発揮し、数々の名作を造り上げてきた」

「詳しいね」

「数年前に発表されたある絵画は、アメリカドルで数百億はくだらないという噂もある。

日本円に直すと数十億円。どちらにしても、ものすごい額だわ」

「よく知ってるね。これで、君の質問に答えたよ。満足かな」
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