瑠哀 ~フランスにて~

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「来たね」



 瑠哀は言われた通り傷がよく見える服を着てきた。

 髪が濡れているので、上で一つに束ねている。



 もともと、夏なのだから肌を出す洋服の方が多く、長袖などでこの傷を隠す洋服の方が少なかった。

 この服は、細い肩紐がついている膝丈上の軽いワンピースだから、ほとんどの傷は見えるだろう。



 朔也は瑠哀に近寄ってきて、瑠哀の腕を上げるようにした。


「まずは、その傷を見せて」


 瑠哀は朔也の言われるままになっていて、朔也がその包帯を丁寧に取っている間も、一言も口を挟まなかった。


 そこに貼られたシートを剥がして現れたものを見て、朔也は顔をしかめる。


「ピエール」



 朔也に呼ばれて、ピエールが箱を手渡した。

 どうやら、救急箱のようである。



 もう一度消毒し直し、なにかの薬を塗って包帯を巻いていく。

 手慣れた様子で傷の手当てを済ませていた。



 それが終わると、今度は目立つ部分のあざのチェックをし始めた。


「腕と肩、それと足の間接部分が特にひどい。他には?」

「腰の周りに少し」

「ほぼ、全身か……」


 朔也は深い溜め息をつく。瑠哀に椅子を勧めて、自分も腰を下ろして行く。


「どうして、そんなに傷だらけなんだ?」

「ぶつけたの」
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