ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~

18 答えの出ぬ感情


 控えめなノックの音に、シイナは気づいて目を開けた。
「――」
 浅い眠りだったのか、眠っていなかったのか、わからない状態でゆっくりと身体を起こす。
 時計は朝の五時を少し過ぎたところだった。
「フジオミ?」
「そうだよ。開けていい?」
「待って、私が行くわ」
 手ぐしで髪を直して立ち上がる。
 もう目眩はない。
 真っ直ぐドアに向かい、開けると、フジオミが立っている。
 昨日の今日で顔を合わせづらいのが本音だが、シイナは平静を装った。
「どうしたの?」
「朝早くにごめん。第二ドームで何かあったらしい。呼ばれたから、今から行かなければならなくなったんだ」
「――」
 聞いた途端、胸がざわりとした。
 フジオミがいなくなる。
「――長く、なるの?」
 それだけが、ようやく問い返せた。
「わからない。詳しいことは来てからと言うことだったから。出来るだけ早く戻るつもりだ。だから」
 フジオミはシイナに手を伸ばし、その手をを取った。
「僕が帰ってくるまで、決して研究区では一人にならないで。仕事部屋以外にも行かないで欲しいんだ」
 温かな手は、いつもと同じだった。
「――」
「心配なんだ。シイナ、お願いだ」
「……わかったわ」
 シイナの答えを聞いて安心したのか、フジオミがほっと息をつく。
「ありがとう。カタオカにはもう話したから、何かあったら彼を頼るんだ。じゃあ、行ってくる」
 もう一度、やや強く手を握ってから、フジオミは自分の手を離した。
 そうして、部屋を出て行った。
 ドアの前で立ちつくしたまま、シイナは動けなかった。
 なぜ動けないのか。
 何も思いつかない。
 妙な気持ちになる。
 この感情は、感覚は、何なのだろう。
 守ってくれるものがいないことから来る孤独感か。
 ただ単に、熟睡できていない倦怠感なのか。
「……」
 ゆっくりと、寝室のドアを閉める。
 そうして、ベッドに戻る。
 横になっても目を閉じる気にはなれなかった。
 天井を見つめたまま、シイナはただぼんやりとしていた。
 目を閉じてみても、結局起きる時間になるまで、眠ることはなかった。






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