FatasyDesire~ファンタジー・ディザイア~
第二章
Whisper - 内緒話 -
危険な状況に晒されたクレドだったがもとよりヨシュアからの攻撃も受けず怪我もなかったので、どうともなかった。
キリエのことも家まで運んでこられたし、今マラソンをしてこいと言われてもできる。
けれどもキリエが危険な目に遭ってしまった。
そのことに自責していた。
確かに勝手に家から出て行ったのもヨシュアと接触したのもキリエだが、もっとちゃんとフォレストの環境を教え込んでいれば、先延ばしにせず昨夜に何があったのか聞き出していれば。
もっと自分がちゃんとしていればキリエがあんな目に遭うこともなかったのに、とクレドは一人考えて自己嫌悪した。
過ぎた事を悔いたところでどうしようもないのはわかっているが、悔いずにはいられないのだ。
「クレド……ごめんなさい。わたしが約束やぶったから、クレドもこわい目にあったんだよね……ごめんね」
ソファーに座るキリエは零れる涙を拭いながら、謝罪する。
本当はこんな泣いているキリエだって見たくない。
「もうクレドとの約束、やぶらないから……きらいにならないで」
まるで母親に叱られて泣いている子どものようだと思い、クレドはキリエの前にしゃがんで優しく頭を撫でた。
「キリエを嫌いになんかなるわけないよ。俺こそ、助けるのが遅くなってごめんな」
クレドはきっと何をしても怒らないで許してくれる、その考えが小さな頃からずっとキリエの中にあって、クレドが自分を嫌うはずがないと自信満々に思っていたが、さすがに今日ばかりは嫌われてしまうのではないかと咄嗟に頭に浮かんだ。
キリエはクレドに嫌われてしまったら、もう一人では立てないかもしれない。
そんな自覚は十分にあった。
キリエが泣きながら何度も首横に振ると、クレドは困ったように笑い、小さな頭をまた撫でた。
「ここがどんなに危険な場所か。アイツがどんな奴なのか、全部話すよ」
濡れた翡翠がじっとアメジストを見詰める。
「……だから、キリエも自分のパンドラのこと、ちゃんと話して」
「うん……っ」
そしてクレドはこのフォレストがどういう町なのかを話した。
殺人や薬物使用、食糧や家を買えずに餓死や凍死する人々、普通に生活を送ることが困難になった住人達。
そんな、世の中の汚物を詰め込んでできたゴミ箱以外何でもない町。
二人が暮らしたガーネットとはまるで世界が違うのだと、クレドは話した。
キリエはそれを真面目に聞き、時折意味がわからなそうにしていたが、クレドが言いたいことはわかった。
「あの男も世界的に有名な盗賊団の若頭だ。人を殺すもの訳ない。一番関わらない方がいい」
ヨシュアのバックには常にトルガー盗賊団がいる。
以前クレドは山賊を一つ壊滅まで追い込んだが、その時は勢いがあったから偶々そうなっただけだ。
今トルガー盗賊団に襲われて、必ず勝てるとは思っていない。
「正直キリエには、あまり他人と関わりを持って欲しくない」
クレドはそういって自分が嫌になった。
確かにキリエの安全のために言っているはずなのに、自分一人が独占してここに閉じ込めておきたいだけなのではないか、そう思ってしまったからだ。
「わかった。クレドがいうなら、そうする」
素直に頷くキリエに、クレドは後ろめたさで視線を逸らした。
キリエのことも家まで運んでこられたし、今マラソンをしてこいと言われてもできる。
けれどもキリエが危険な目に遭ってしまった。
そのことに自責していた。
確かに勝手に家から出て行ったのもヨシュアと接触したのもキリエだが、もっとちゃんとフォレストの環境を教え込んでいれば、先延ばしにせず昨夜に何があったのか聞き出していれば。
もっと自分がちゃんとしていればキリエがあんな目に遭うこともなかったのに、とクレドは一人考えて自己嫌悪した。
過ぎた事を悔いたところでどうしようもないのはわかっているが、悔いずにはいられないのだ。
「クレド……ごめんなさい。わたしが約束やぶったから、クレドもこわい目にあったんだよね……ごめんね」
ソファーに座るキリエは零れる涙を拭いながら、謝罪する。
本当はこんな泣いているキリエだって見たくない。
「もうクレドとの約束、やぶらないから……きらいにならないで」
まるで母親に叱られて泣いている子どものようだと思い、クレドはキリエの前にしゃがんで優しく頭を撫でた。
「キリエを嫌いになんかなるわけないよ。俺こそ、助けるのが遅くなってごめんな」
クレドはきっと何をしても怒らないで許してくれる、その考えが小さな頃からずっとキリエの中にあって、クレドが自分を嫌うはずがないと自信満々に思っていたが、さすがに今日ばかりは嫌われてしまうのではないかと咄嗟に頭に浮かんだ。
キリエはクレドに嫌われてしまったら、もう一人では立てないかもしれない。
そんな自覚は十分にあった。
キリエが泣きながら何度も首横に振ると、クレドは困ったように笑い、小さな頭をまた撫でた。
「ここがどんなに危険な場所か。アイツがどんな奴なのか、全部話すよ」
濡れた翡翠がじっとアメジストを見詰める。
「……だから、キリエも自分のパンドラのこと、ちゃんと話して」
「うん……っ」
そしてクレドはこのフォレストがどういう町なのかを話した。
殺人や薬物使用、食糧や家を買えずに餓死や凍死する人々、普通に生活を送ることが困難になった住人達。
そんな、世の中の汚物を詰め込んでできたゴミ箱以外何でもない町。
二人が暮らしたガーネットとはまるで世界が違うのだと、クレドは話した。
キリエはそれを真面目に聞き、時折意味がわからなそうにしていたが、クレドが言いたいことはわかった。
「あの男も世界的に有名な盗賊団の若頭だ。人を殺すもの訳ない。一番関わらない方がいい」
ヨシュアのバックには常にトルガー盗賊団がいる。
以前クレドは山賊を一つ壊滅まで追い込んだが、その時は勢いがあったから偶々そうなっただけだ。
今トルガー盗賊団に襲われて、必ず勝てるとは思っていない。
「正直キリエには、あまり他人と関わりを持って欲しくない」
クレドはそういって自分が嫌になった。
確かにキリエの安全のために言っているはずなのに、自分一人が独占してここに閉じ込めておきたいだけなのではないか、そう思ってしまったからだ。
「わかった。クレドがいうなら、そうする」
素直に頷くキリエに、クレドは後ろめたさで視線を逸らした。