銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
いざ城内へ
「う――む」

「ふ――む」

「よし、育ってないわね」

「ええ、育っていませんね」

 あたしとモネグロスに真正面から見つめられて、小さな土の精霊は緊張して固まっている。


 あの流星夜から、もう3日。

 あたし達は城に向かい、ひたすら森の中を進んでいた。


 空気まで緑色に染まりそうな、どこまでも続く広大な森林は、土と緑の匂いでむせ返りそう。

 木々の合い間から網目のように差し込む木漏れ日が、明るく周囲を照らしている。

 透き通った細い水の流れる川。清々しいせせらぎの音。可憐な鳥のさえずり。

 そんな、ひと気のない深い森の中、あたし達は大きな岩場の陰でひっそりと休憩していた。

 足元では、小さなモコモコの丸い毛玉の生き物が、何匹もチロチロと動き回っている。

 ずっと向こうの木陰では、見たこともない毛色をした鹿に似た生き物が、黒い瞳でじっとこちらを見つめていた。

 ……そう。結局あたしも、みんなと一緒に城へ同行する事になった。

 アグアさんを見つけ出すために、あたしの力が必要だから。

「オレがいくら城内を探しても、アグアを見つけられなかったんだ」

「わたしも、気配をさぐろうとしましたけど、むりでした」

「おそらく、何か特殊な措置を施していると予測」

「ああ。そこで雫の出番なんだ」

 精霊達の会話を、それぞれの顔を見回しながら黙って聞くあたし。
 と、モネグロス。

「同じ水の精霊同士なら、オレ達よりも強く気配を感じ取れるはずだ。だから雫を、城内に入れる必要がある。それも、オレ達精霊が入り込めない場所まで」

「精霊が入り込めない場所?」

 あたしとモネグロスが顔を見合わせる。そんな場所があるの?
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