僕は君を殺し尽くしたい
さよなら生ける身体、ようこそ死せる身体
「いった……うわ、今日も派手にぶちまけたな」

床にぶちまけられた僕の内臓。腹はぽっかりと空いてる。
戻すの大変なのに。
時計を見たら午後九時半。三時間ほど眠ってたのか。
シャワーの音がする。どうせ僕の血は蒸発するのに。
内臓を腹に戻そうと立ち上がろうとして四つん這いになったら、肝臓が落ちた。
血でぬらぬらと蠱惑的に光る肝臓。
柔らかくぬちゃっとした肝臓を持ったまま、小腸と大腸と胃の半分と心臓が丁寧に入れられてるキャリーバッグの側に座る。
座って、内臓を戻していく。無茶苦茶だけど。どうせ一時間もしたら元通りになるから、無茶苦茶でも問題なし。
せっかく戻した内臓を落とさないために、糸で縫っていく。
縫い終わって部屋を見渡すと、血が蒸発し始めてる。

「あれ?兄さん、もう起きたんですか?」

弟の死体が腰にバスタオルを巻いた姿のままで、戻ってきた。
僕の名前は屍。僕らの名付け親は、もうちょっとまともな名前をつけてくれる気はなかったのかな。
あまりにそのまますぎて、偽名を使う羽目になったじゃないか。

「そりゃあ、心臓殺られてないからね」

「うふふー。一度心臓取り出して、舐め回してまた戻したんですけどねー?兄さんの心臓は今、僕の唾液塗れだったりします」

「……きもっ」

胸張って言うことじゃない。
心臓取り出して洗おうかと思ってたら、死体が抱きついてきた。

「次は僕の番ですよ?一思いにぶっ殺してください」

そして僕は、死体の喉に包丁を刺す。
こうしてると、口移ししながら飲んだ毒の味を思い出すね。
まさか、生ける屍として甦ったのは想定外だったけど。
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