俺様ホストに愛されて
暗雲
真夜中のネオン街はまだまだ賑わっていて、眠る様子はない。
「イッキさんとリュウって兄弟だったんだね」
煌びやかなネオンの下を、リュウと並んで歩く。
もう何度も経験しているのに、今日は気持ちが全然違う。
「まぁな。イッキが店の代表で、気付いたら俺もホストになっちまってた」
自嘲気味に笑ったリュウの顔はどこか寂しそうに見えて、あたしは花束を持つ手にギュッと力を込めた。
リュウが自分のことをこんな風に話してくれるのは嬉しい。
「金も名誉も地位も全て手に入れたけど、そんなもん手に入れたって心が満たされることはなかったよ」
だから、聞き漏らすまいとあたしは必死にリュウの横顔を見つめていた。
「けど、そんな時妃芽に出会って……そっから俺の人生は変わった」
「えっ⁉」
だって、初めて会ったのはあの夏の日だよね?
「俺の部屋、すぐそこのマンションなんだよ」
歩きながらその方角に顔を向けたリュウ。あたしも同じようにそこを見た。
「ええっ⁉あそこ?」
そこは言わずと知れた超高級マンションで、ワンフロアに一部屋しかないという超セレブ物件。