Octave~届かない恋、重なる想い~
 エレベーターの中で、最終確認された。


「君はただ、頷いてくれたらいい。
 そう、その真っ赤な顔で俺の横にいたら、きっと君のお父さんも信じるさ。
 うまくいく、大丈夫だ」

「はい……」


 エレベーターが6階に着いた。

 手を繋がれたまま、エレベーターを降りて、ナースステーションの前を通る。

 いつも父がお世話になっている、顔見知りの看護師さんがいたので、軽く会釈をすると、いつもよりずっとにこやかに会釈を返された。

 きっと、彼氏を連れてお見舞いに来たと思われているに違いない。

 そして明日には、看護師さんみんなが雅人さんを私の彼だと認識しているはず。

 雅人さんの狙いは、まさにそれだった。
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