セク・コン~重信くんの片想い~

6話 ライバル出現!?


「うーっす」
 アオイを先頭に、喫茶店之扉が開かれる。
「あれっ、アオイちゃん? 今日バイト休みじゃなかったっけ?」
 カウンターからダンディーな男性店員がひょっこり顔を出す。
「今日は飯食いに来ただけ。友だち連れてきた」
 明治をイメージしたと思われるレトロな雰囲気の喫茶店内は、柔らかいオレンジ灯と、お洒落で落ち着いた空気が漂っていた。
 店の中には、濃厚で涎が出てきそうなデミグラスソースの香が漂っている。
「あー、こっち」
 アオイに手招きされて、重信たちは店内の一番奥の4人がけのテーブル席に着いた。
 ちょうど、カウンター席の男性客が注文した料理にナイフを入れる瞬間だった。いい香の犯人はどうやらこのハンバーグだったらしい。
「アオイってこんな洒落た店でバイトしてんの?」
 恵太がいつになく畏まった様子で、小声でアオイに問いかける。
「んー、まあ練習の合間とか、空き時間だけだけどな。結構融通利くから助かってる。因みに言っとくけど、ここのハンバーグセットまじ美味いから」
 アオイが壁に掛けられたハンバーグセットの写真を指差して笑った。

「どうもいらっしゃい」
 注文をとりにやって来たのは、さっきカウンターから顔を出したダンディーな男性店員だった。年の頃は四十過ぎといったところ。ところどころ生やした髭と、その風格にはミスマッチな黒いエプロン姿だ。
「こっちは店長の優木(ゆうき)さん」
 アオイの紹介で、ダンディーな店長優木さんがにっこりと微笑む。
「どうも、優木です」
 優木さんは、お冷やの入った薄水色之グラスを四人の前に慣れた手つきでならべてゆく。
 空になったトレーを左の脇に挟むと、彼は大きくがっちりした手を重信に差し出した。どうやら、握手を求めているらしい。
 重信がその手を握り返すと、優木さんは重信の顔をまじまじと見つめながら、
「それにしても、えらい男前連れて来たな、アオイちゃん。ダブルデートか?」
なんて言い出した。
「店長!!」
アオイがふいを食らったかのように、口にしていたグラスから水を吹き出し叫んだ。
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