セク・コン~重信くんの片想い~

3話 まさかの対面!?

 
 今、重信のすぐ隣に恵太。そして目の前にあのアオイが対面する形で座っている。
(なんでこんなことに……?)
 重信は緊張で碌に目も合わせることもできず、いつも以上にやたらと無口に学食の椅子に腰掛けていた。
 一方、恵太はおかまいなしに醤油ラーメンをズルズルと食し、アオイは黙々とカツ丼をたいらげている。
「ハギ、食欲ないの?」
 心配そうに恵太が重信に問いかけた。
 それもその筈。あっさりめの、きつねうどんを購入したにも関わらず、そのうどんさえも喉
を通らない始末。アオイがこんなにも至近距離にいるとなると、流石の重信も耐えられなかったようだ。
「ま、まあ……」
 そう言葉を濁すと、
「お前、でけえのに食細いのな?」
と、丼のご飯を頬張りながらアオイがそう言った。
「いつもはハギもそれなりに食ってんだけどな。っつうか、アオイが馬鹿食いしすぎなんだよ」
 恵太が口下手な重信に代わって助け舟を出した。そして、呆れたようにアオイの平らげた器たちを見渡す。
 その数実に二つ。さらに今、三つ目の器がそこに加わろうとしていた。
「うるせー。食わなきゃ身体もたねえんだよ」
アオイの小柄からは想像もつかない程の食いっぷりに、重信は圧倒されていた。
「いや、どう考えても食いすぎだろ」
 恵太が苦笑を浮かべているのをよそに
アオイは重信に話し掛ける。
「ハギ……だっけ? お前2ーEだよな?」
 重信は驚きを隠せずぎょっとしてアオイを見た。どうしてそんなことを彼が知っているのかが分からなかったのだ。
「そうだよ。萩本 重信、通称ハギ。ってか、なんでそんなことアオイが知ってんの?」
 恵太が重信の疑問を全部アオイにぶつけてくれた。
「でけえから」
 アオイは真面目な顔をして、重信の頭のてっぺんを見上げている。
「すげえ身長でけえから、羨ましいなーって。ってのもあるけど、まず恵太といつも一緒につるんでんじゃん? オレじゃなくても誰でも知ってるだろ」
 アオイの言葉に妙に納得して、恵太はラーメンの汁をすすった。
「身長欲しいのか?」
 もっと気の利いたことを口にできたら良かったものを、やっも口をついて出てきた重信の言葉は、こんな馬鹿みたいなものだった。
「ん? そりゃなー。だってオレちびだし? もうこれ以上伸びねえって分かってるし」
 予想外にも、アオイは重信のばかりみたいな質問にもちゃんと返してくれた。
「頑張りゃまだ伸びるだろ」
 一瞬はたとアオイと目が合ったと思うと、ぷっとすぐさま噴き出されてしまう。
「まーな、数センチ位なら、なんとか伸びてくれっかもな」
途端、重信の心臓が飛び出しそうな程、大きく鳴り始める。

(や、やばい……! こいつ、俺のド真ん中だ……!)
 ついに自覚してしまった重信。
 きっと今、重信の顔はひどく赤くなっているに違いない。


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