もう、嫌だよ。
ハジマリトオワリ
私は、初めて会ったときから好きだった。これは、世間一般では一目惚れと言う。私は、思い切って告白した。返事は『いいよ。』

 嬉しくて、泣きそうだった。大好きで、大好きで、こんなに独占欲があったなんてと、自分でもびっくりするぐらいだった。

でも、最近忙しくて会えなくて、会えたとしてもすぐ「またね。」

毎回、「またね」を言うのが嫌で・・・・「明日、会おうね!」

変わらないかもしれないけど、何かが違うんだ。


彼は人付き合いが良い方で、女友達もいて親しく話してるのを見るとふつふつと、醜いものが込みあがってくる。『嫉妬』と言うそれは認めたくなかった。認めたら、今までの自分が壊れてしまうような気がして・・・。だからと言って、無視するのも辛くて。


やっと会えた昼過ぎ、私はこんな質問をしてみた。

「ねぇ、私の事好き?」

彼は、飲んでいたジュースを噴出した。

「ごほっ、げほっ・・・・は、な、なんで?」

「だって、気になって・・・。」

「鈴は、好き?」

質問を質問で返されても困る。

「好きだけど。」

普通に真顔で答えた。彼は困った顔で遠くを眺めた。

そんなに、答えられないって事は嫌いなの?

「ま、まぁどこ行こうか!」

何かでごまかす彼は、いつもの通りに笑っていた。泣きそうな気持ちを抑えて、「どこでも・・・。」と答える。

嫌いなのかな?嫌いなら、いっそ・・・・。

恋人同士なら手ぐらいはつなぐであろう道を、私たちは手をつながず離れて歩いた。

「嫌いなら、早く突き放してくれればいいのに。」

ぼそっと、言った言葉の中にはいろいろな意味をこめた。

近くの公園で雑談を話していた。

「でも、あの公式はこうじゃないの?」

「だから、あれはこっちだって。」

恋人、なのに。それらしい会話をしたのは最初だけだった。この作り笑いも、いつ壊れるか分からない。

気づいたら、もう帰る時間。

「もう帰らなきゃ・・・・じゃあまた明日。」

「うん。また明日な。」

手を振って、別々の道に分かれる。帰り道は真顔で頭の中は帰り道しか考えていなかった。

「ただいま・・・。」

シン・・・と、静まり返った家の中。

「今日は、皆で旅行に行ったんだった。」

静かな部屋に、わたしの声だけが響く。食欲がなくて、とても眠かった。そして悲しかった。

自分の部屋に駆け込んで、ベットにダイブしてぬいぐるみを抱え声を上げて泣いた・・・はずなのに声が出なかった。掠れた息だけが部屋に響いていた。

「うっ、ひっく・・・。」

やっと声が出るようになったときは、もう涙が枯れた時で、疲れ果ててそのまま眠りについた。


朝起きたとき、メールが来ていた。

【おはよ。よくねむれた?】

そんな事が書いてあった。

「全然、だめだよ。」

ぽつり、呟いた言葉は虚空に消えて何もなかったように時間が流れる。

【おはよwよく眠れたよ!】

嘘をついた。彼を心配させたくなくて、わざと明るく書いた文章を見つめ、嘲笑った。

「馬鹿みたい。」

携帯を放り投げ、もう一度眠りについた。

 次に起きたのは、午後三時。気分転換に外へ出かけたら、彼を見つけた。声をかけようとしてやめた。目の前で信じられない事が起こったから。


知らない女が彼に抱きついた。


動けなくなった。でも、数秒後背を向けて走り出した。


なんで?


私じゃだめだったの?


涙が後から出てくる。あの女の顔を思い出すだけで吐き気がする。

家に着いたとき私は、息遣いを直して家に入った。

何もかもが馬鹿らしくなって、彼のことを思い出す。

「あ、あはっ、あはははははははははははは!!!!」

私は、壊れた。ねじが飛んだのだ。彼を今すぐ手に入れたいと思う気持ちがおかしくて、嘲け笑った。

玄関で発狂する私は、このまま死んでもいいんじゃないかと思いながら自分の首え手を伸ばした。

「あはは、は・・・・・・・・・・・・・・・・。」

首を手で掴むと声が出なくなってひゅうひゅうと、苦しそうな吐息が零れるだけで、それでも口を吊り上げ笑っていた。

その時、玄関が勝手に開いた。

「鈴!」

入ってきたのは彼で、私の腕を掴んで喉から引き離した。

「けほっ、けほっ・・・・。」

「何してるんだよ!お前が全速力で走っていくのを見たから、追いかけてきたんだよ!」

なんで?とは、考えれなかった。

「あ、あはははは。」

笑いが止まらない私を、彼は抱きしめた。

でも、だめで。止まらなくて・・・・・・。


ドコッ・・・・。


彼を、床へ押し倒して首を絞めた。

「り、ん!や、めろ・・・・。」

「3つ選択権をあげるね。」

その間も首を絞めている私は、にっこりと極上の笑みを零した。

「1、私にそのまま殺される。2、君が私を殺す。3、ここから立ち去る。」

「さ、ん!」

予想通り言った答えに少し満足して、手を離した。

「かはっ、げほっ、はぁ、はぁ・・・・・。」

「さようなら。」

彼を、家から出して自分の部屋に行った。


さようなら、さようなら、さようなら。

今までありがとう。


今までの私ももう終わるよ。ありがとう。


赤い糸を首に何十にも巻いて、引っ張った。


本当にありがとう。さよなら来世の旦那様。



END

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