* another sky *

「わかってる。
自分でも、わかってるから…。

じゃあ、私、帰るね。」


振り切るように、そう言って帰って行く後ろ姿が、ちょっと不安そうで、切なかった。


「あれは、ヨリ、戻す気かもね。」


綾子の言葉に、私も梨花も静かに頷いた。


そうなればいい?

そうなったら、麻友理は泣かなくて済む?


正直、私たちは、見守っていくしか術がない。


まだ22時か…。

どうしよう。

航太に会いたくなっちゃった。

航太の家に行こうかな。


しばらく迷って、航太に電話をかけると留守電だった。


留守電かぁ。

会いたかったな。

何で、だろう…。

いつもなら、5日間くらい、どうってことないのに。

何故か今夜は、航太とずっと一緒にいたいよ。


―――――。


もう一度電話をしてみようかと思ってやめた。


きっと明日も仕事で忙しいだろうし。

我儘、言っちゃいけないよね…。


俯きながら歩く私の足元を、眩しい光が照らし出す。


ショウウインドウの明るさに誘われて、目を向けると、華やかなドレスが輝いていた。


あ、ウエディングドレスだ。

いつか、こんな綺麗なドレスを着ることが、できるのかなぁ。

その横には、航太がいて…。

もし、そうなったら、嬉しいんだけどな。


よし。

その為にも、頑張んなきゃ。


今日はおとなしくお家に帰ろう。


「航太。大好き。」


そう、一言だけメールして。
< 75 / 769 >

この作品をシェア

pagetop