<ミズキサイド>
記憶はもうろうとしていた。
でも、海斗が離れていくのが怖かった…。
行かないで、行かないで…。
お父さんと重なって
もう誰も失いたくなくて
必死に抱きついた。
一人は嫌だよ。
近くに居てよ。
わがままだよね…。
でも、絶対に絶対に嫌だった。
行かないで…。
海斗は優しく抱きしめてくれた。
びっくりして、ドキドキしたけど
温かくて、嬉しかった。
気持ちが安らいだ。
海斗、海斗…。
「ずっとそばに居るから。」
「お前が苦しい時は、支えるから。」
嬉しくて、さっきとは違う涙が流れた。
温かな涙が頬をつたった。
心地よかった。
苦しみが全て、すーっと抜けていくようで。
そのまま、眠りについた。