カゼヒキサン。
<ミズキサイド>

海斗の声が聞こえなかった

何かを喋っているのは分かった

答えられなかった



熱いよ

苦しいよ

頭が痛いよ

ねぇ助けて

助けて海斗

待って

そんなに速く歩かないで

行かないで

置いていかないで

振りむいて

あたしに気付いて

優しく見つめて

手をさしのべて


ううん

そこまで望まない


ただ一つ

待って。


遠くに行かないでほしかった

あたしのそばに居てほしかった


待って。

待ってよ海斗。


その一言も言えないまま

あたしはその場に崩れ落ちて行った。

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