竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
日々是平穏なり


『本日も、お足もとが悪い中、さざれ屋にご来店くださいまして、ありがとうございます――……』




開店と同時に流れる店内アナウンス。

緊張しながら、30度の角度でお辞儀をする。



「いらっしゃいませ」



頭の中には、接客七大用語がくるくると回っている。


「いらっしゃいませ」「かしこまりました」「申し訳ございません」「お待たせいたしました」「恐れ入ります」「ありがとうございました」「少々お待ちください」


とりあえずこれとお辞儀さえ覚えていればなんとかなるって、本当だろうか。


まぁ、気にすることはない。所詮私は時給で働くアルバイト。最低限のことさえしていればいい……。


エリはお辞儀をしたまま、昨晩のことを思い出し憂鬱になっていた。




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