鬼姫の願い
予期せぬ訪問者




事が動いたのは、その数日後のこと。




バタバタバタ




「輝宗様…!」




伊達家の嫡男である梵天丸(後の伊達政宗)の側近兼世話係をしている片倉景綱が大きな足音をたて輝宗のもとに駆け込んできたのは、宵も深くなってきた頃だった。


一人書物に目を通していた輝宗へ部屋の外から慌てたようにかけられた声。

"入れ"と声をかければ開かれた障子の先にいる景綱はいつも様子が違う。


普段努めて冷静な彼の珍しく取り乱した姿に、輝宗は首を傾げた。




「どうしたんだ。こんな夜更けに…」


「そ、それが…」




輝宗の問い掛けに、どこか言いづらそうに視線をさ迷わせる景綱。




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