眠れる森の
第3章

どっちが誘ったのか自覚もないsideあさひ

「郁都?」
明かりのついた家に帰宅したのに、何の音もしない。
父と義母がそろって出かけるので、『夕食を頼む』とメールがあったので、家にいるのは郁都だけのはずだ。
部屋をのぞくとうたたねしてる。

郁都と会ったのは、あさひが中3、郁都が小6。
小学生の癖に大人びた目をしていた。
「お姉ちゃんって呼んでね。」
と言ったのに一度も呼んでくれることはない。
距離をおかれているようなのに、拒絶されているわけでもない。

雪の日。
大幅にバスの時間が遅れ、帰りが夜遅くになったことがあった。
バス停に降り立つと郁都が待っていて、驚いた。
無表情な顔であさひの姿を認めると前に立って歩き出した。
あさひがくしゃみをすると自分のマフラーをぐるぐるとまいてきた。
後で義母に聞いた。
大雪に彼女を置いてさっさと帰ったせいでふられたと。
「そういうときはきちんと送ってあげなきゃねえ。気がきかないったら。」
義母は苦笑していたが、あさひは落ち着かなかった。
< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop