嘘、鬼よ。
【5】














それからしばらくたったある日…。



晴れ渡る空のもと、私は入隊試験の日をむかえていた。






傷もすっかり治って、痣も消えかかってる。


はじめの方なんかは、みんなが女なのに傷が残るんじゃないかとか、やたらめったら心配してきたけど、私は案外傷の治りがはやいほうだからそんな心配はいらなかった。




藤堂はメンタルが弱いのか、毎日のように見舞いにきて、顔の傷は治るだろうかとか体は痛まないかとか甲斐甲斐しく世話をしてくれた。








配属が決まるまで他の隊士には紹介しないということだったため、私はまだ一度も他の隊士と顔を会わせたことがない。



食事も怪我人だからと部屋ですましてたし、たまに気分転換に部屋からでても人に会うことはなかった。






だが、沖田の話によると、私はたびたび目撃されており幻の幽霊隊士と噂されていたりするらしい…





そんな幽霊隊士の入隊試験というのは、瞬く間に隊士の中に広がり、格技場へ着くと既にギャラリーで賑わっていた。




そんななか、土方を見つけて声をかける。





「待たせた」


一応自分の竹刀と木刀を持ってきた私は、それを壁に立て掛けた。




「あぁ、では始めようか。
相手はどうする
女だし手加減できる幹部にするか本当に弱い平隊士にするか」



少なくとも、後の新撰組なのだから平隊士でも弱いことは無いだろうに。





私は、別にどうでも、と答えると包みから静かに木刀を出した。










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