入り口の近くには見張りと、橘さんの牛車の付き人がまだそこで待っていたみたいだった。


ずっと待っていたのかしら。



「御用はお済みでございますか?
行くところがないようでしたら、我が主君が養女としてお引き取りなさる、とおっしゃられています」



付き人に話しかけようか迷っていたら、私にとって今日二回目の願ってもない申し出。


上手く行きすぎて怖いくらいではあるけれど、このチャンスを逃がすわけにはいかない。


二つ返事でお引き受け致しますと言って、再び牛車に乗った。


ついているのか、ついていないのか分からないわ。


今日一日で現代から遥か離れた場所にきて、盗賊に現代に帰るために必要な時計を盗まれて。


だけど、別当殿の協力が得られ、そして橘さんの養女にして頂けることに。


とにかく幸運か不幸かは判断できないけれど、昨日までの日常からはまるで予測できない事態に陥ったことは確かね。


どれだけ不利な状況でも、不測の事態に陥っても。

検事たるもの、常に冷静に。


いつもの自分の信条を心の中で繰り返し、混乱する頭と心をなんとか落ち着かせる。


歩くようにゆっくりとしたスピードの牛車に揺られながら。

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