理想の恋愛関係
「ありがとう、緑さんのおかげで簡単に選べたよ。去年は一人で来たから結構時間がかかったんだ」

「役に立てて良かったわ」


私へのお返しは無かった事に少しがっかりしながらも、顔に出さない様にして微笑んだ。


まあ、仕方ない。


元々お返しが欲しくてチョコを贈った訳じゃないんだし。


優斗君の役にも立てたし良かったかもしれない。


そんな事を思っていると、優斗君が自然な口調でサラっと言った。


「緑さん時間有る? 食事でもして行かないか?」


「え? い、行く!」


やっぱり変なヤキモチを焼かずに選んで良かった。


こんなに良い事が待っているなんて!


私も気に入っているレストランだから、更に気分が良くなった。


食欲も湧いて来て、ボリュームの有る肉料理のコースを注文した。


「緑さんは痩せの大食いだな」


優斗君は感心したように言い、自分はあっさりした魚料理のコースを注文した。


「優斗君は食欲が無いの?」


今もいろいろと悩んでいるのだろうか。


心配になりながら言うと、優斗君はそんな事は無いと否定した。


本当かは分からなかったけど、前みたいに顔色は悪くないし、笑う事も有るからそれ以上踏み込んで聞く事はしなかった。


それからは仕事の愚痴や、最近見た映画の話をして楽しく過ごしていたけれど、途中私の知らない女性がテーブルの前に立ち優斗君に声をかけて来た。


「優斗、偶然だね。こんなところで会うなんて」


女性は優斗君より大分年上、40代に見える。


特別美人って訳では無いけれど、なんだか凄い貫禄の持ち主だった。


優斗君も緊張した様な顔をして女性を見ていた。

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