かけぬける青空は、きっと君とつながっている

夕暮れブランコ

 
電車を乗り換えてからは早かった。

県庁所在地の大きな市へ着いたあたしたちは、急いで駅のバスターミナルから動物園行きのバスへ乗り、20分ほどで目的地へ着く。

すでに時刻は夕方の4時を回っていて、5時が閉園時間の動物園は、入園者はあたしたちのほかに数組で、逆に、帰りはどこでご飯を食べようか、と話しながら園を後にしていくカップルや、小さな子どもの手を引く母親が多い。


「もう夕方か……。あの2人、まだここにいるといいんだけど。それより、お前はいいのか? 詳しい説明もしないまま、民宿を飛び出してきたんだろ? 母さんやばあさんにあとで何を言われても、俺は責任は取れないからな」


動物園に入ってすぐの広場にある案内板を見ながら、キリンがいる場所を探していると、間宮さんがそう言ってきて、顔をそちらに向ける。

お母さんやおばあちゃんのことは、できれば今は言わないでほしかったのがあたしの本音だ。


民宿を出るとき、ただ、出かけてくる、としか言って出てこなかったため、今頃、お母さんとおばあちゃんは、なかなか帰ってこないあたしを、不思議に思っていることと思う。

間宮さんと一緒に出かけても、夕飯の支度の時間までには戻っていたし、数日前、満月を見に行ったときは、いろいろと勘違いしているお母さんが快く送り出してくれたのだ。
 
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