部長とあたしの10日間
木曜 22:00
隣で平然とハンドルを握る部長の横顔から目が離せない。
沸き上がる焦燥感が抑えられない。
こんなに落ち着かないのは22年間の人生で初めてだ。


あたしは今まで外見だけで男を選んできた。
そもそも和田さんに興味を持ったのだって、ルックスがストライクだったからと言っても過言ではない。


だけど部長は違う。


整ってるけど、シャープ過ぎる顔はあたしの好みじゃないし。
年齢にしたって、あたしの歴代の交際相手の最年長記録を一気に引き上げるくらいかけ離れてる。


外見が別段好みでないということは、どうやらあたしは不本意ながら、部長の中身に惹かれてることになる。


つまり今までの相手とは、今までの恋愛とは、全く違うのだ。


部長に触れてみたい。
いや違う、できることならばもう一度あの大きい手で触れてほしい。


そんな欲求だらけのあたしとは対照的に、部長はフロントガラスの向こうに目をやったきりこっちに目もくれない。
本当につれないヤツ。
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