ある愛の終わり
板でふさがれた窓は日差しを遮るから、二人に光は訪れない。
だがヘッドボードの電光時計は、終章への時間をカウントダウンする。


ベッドに埋もれてタバコを吸い始めた男のために、女は灰皿を投げやった。

二人の間を紫煙が遮る。

背中を向けて下着に足を通す尻の丸みが、なまめかしく形を変えて男の未練を誘った。

「本当にこれで最後なんだな」

「そうね」

つれないほど淡々とした返事。
それが本心を隠そうとするときのクセであることは、長い付き合いで解っている。

「カレシへの罪悪感……か。俺への罪悪感はないのか?」

カットソーに腕を通す背中が、びくりと戦いた。

「体の関係がなければ、あのまま友達でいられただろうに」
 
誘ったのは彼女からだ。
子供だったがゆえの、性に対する好奇心を満たすだけの関係。

「どの男よりも、俺との付き合いが長いのにな」

男と女に落ちた二人は二度と友情では繋がれないから、細く危うい関係を手繰り寄せるように体を重ねた。
友情の延長だと嘘を吐きながら。

その嘘も、今日を限りに終わる。

「だから、教えてくれ。本当に友情だけなのか?」

女の声は頑なに色を拒む。

「それ以外、何があるの?」

「そうか」

男は指先が焦げるほど深く煙を吸い込み、自分の本心を隠すために、ふうっと煙幕を吐き出した。

「まあ、結婚式には呼んでくれ。友人としてスピーチしてやるよ」

精一杯の嫌味も、すでに着替えを終えた背中には虚しいばかりだ。

「ええ、ぜひお願いするわ」

去り際の一言も、淡々としたままだった。


板でふさがれた窓は日差しを遮るから、二人に光は訪れない。
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