ライラックをあなたに…


「……さん……寿々さ………さん!!」



意識が曖昧な中、必死に私を呼ぶ彼。

心配そうに見つめる彼の表情が全てを物語っている。


『死』を選ぶほど、追いつめられた状況に私は再び直面した。



「何で、助けたのよ…」

「何でって…」


申し訳なさそうに表情を歪めた彼に、筋違いだと承知の上で八つ当たりする私。

空になったマグカップを握りしめたまま、彼の肩口を叩こうと右手を振り上げた。


すると、彼はそんな私の右手を掴んで、


「落ち着いて…」


優しい声音で語り掛ける。

けれど、私は遣る瀬無い想いを他に吐く術も知らず、溢れる涙と共にもう片方の手で彼の胸を何度も叩いた。


「何で……どうして…助けたのよ……私なんか……」


嗚咽にも似た声を漏らしながら、彼にやり場の無い感情をぶつけてしまう。


「泣きたければ泣けばいい。叫びたいなら好きなだけ叫べばいい。だけど、『死ぬ事』だけは許さない」

「ううぅっ……ぅっ……」



彼は私の右手を掴んだまま、もう片方の手で私をギュッと抱きしめた。


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