桜縁
第六章




敵であった薩摩が突如、休戦状態となり、今や協力関係になりつつある長州。


それもすべて【坂本龍馬】とその一味のせいだということが分かり、幕府を始めとする幕府に協力的な藩が、坂本達を捕らえようと躍起になっていた。


会津はもちろん新撰組も、その命令を受け今や京の都は警戒体制に入り、新撰組は昼夜問わずに、厳重な警戒をし続けていた。


「坂本は見つかったか?」


「いや、見つかんねぇ。」


「この京にいるのは確かだ。何としても探しだせ。」


「あいよ。」


お風呂から上がって来た月は、その様子を近くの廊下から見ていた。


厳重な警戒をしているだけに、夜の巡察も一苦労のようだ。


今日の夜の巡察当番は原田率いる十番組であった。遅くまでの見回りでこのところ、隊士達も疲れているようだ。


土方は話し終えると中へと戻って行った。


「……なんだお前、まだ起きてたのか?」


部屋に戻ろうとした原田に見つかってしまう。


「はい、今日は仕事が多かったので。」


「そうか、遅くまでありがとうな。」


「いえ。大したことではありませんから。」


にこりと目を細めて笑う月。つられて原田も自然と笑みがこぼれる。


やはり、疲れて帰って来た時に見る女の笑顔はいい。


「なんなら少し付き合ってくれるか?」


「え?」


「少し酒でも飲まねぇと、寝られねぇからよ。少しだけ…。」


酒を飲む仕草をしながら頼む原田。それがおかしくて、つい承諾してしまう。


「はい。」








月は酒を飲むのを付き合うために、原田の部屋へと向かった。


周囲はすでに寝静まり、しんと静まり返り、この部屋だけがボンヤリと明かりが燈されていた。


原田の杯に酒を注ぐ月。


「悪いな。」


「いえ。」


「それにしても、こうやって静かに酒を飲むのは久しぶりだな。いつも新八や平助と一緒に飲んでったから、妙な気分にさせられちまう。」


「そうですね、いつも賑やかに飲んでいらっしゃいますものね。」


「そういやこの頃、お前を連れて巡察に出てねぇな。刀が扱えるんだから、連れて行ってもいいんだが…。」


刀が扱えるとはいえ月は女だ。隊士でもない者を危険な目に合わせるわけにはいかず、ずっと月は屯所の中にいた。


「いいんです。それに最近は、仕事も増えましたし、屯所にいても退屈はしませんから。」


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