知らなかった逸材【TABOO】
知らなかった逸材
「あっ……」

あたしの愛撫に、彼の唇から吐息まじりの声が漏れる。

夜更けのラブホテルで、あたしは彼を“調教”していた。

「俺さ、す、好きな子、で、できたんだ」

数時間前、いつものバーで、彼は頬を赤らめながらそう、告白してきた。

「あら、よかったじゃない」と返したあたしに、彼は真顔であたしの手を握り、こう告げた。

「なぁ、お前、経験豊富だろ? 俺をオトコにしてくれよ」

経験豊富というのは正直心外だけど、処女ではないし、男性経験も確かに複数人ある。

そんな恋愛愚痴をこぼしてきた古くからの友人が、何を隠そう、今、目の前にいるこの彼だ。

「童貞の何が恥ずかしいのよ」

面食らってそう突っぱねると、彼は更に顔を真っ赤にした。

「彼女、つい最近まで上司と付き合ってたんだよ。第一、十代ならともかく、この年で童貞なんてやっぱ引くだろ?」

確かにあたしたちはもうすぐアラサー。彼とて別にオタク気質とか、女性に興味がなかった訳ではない。単にチャンスに恵まれなかっただけだ。

「……あたし、来月結婚すんのよ?」

「知ってるよ。でも頼むよ。取りあえず童貞だけは捨てたいんだ」

そんな訳で、今に至っていた。無論、今宵限りの後腐れなしってのが条件。あくまであたしは“教え”で、彼が“学ぶ”。

「……待って。駄目よ。そんなに焦らないで。ゆっくりよ。……そう、女のカラダはデリケートなの。脳でセックスするのが女なの」

まさに手取り足取り。キスの仕方、舌の絡ませ方、胸への愛撫、密部へのタッチやあれこれ。

正直、感じてるどころではなかったけど、恋人では絶対に味わえない達成感と征服欲に気付いていた。彼は素直で飲み込みがいい。これは遅咲きながら、将来有望かもしれない。

「あ、あ……」

不意打ちな胸への愛撫。思わず声が漏れた。上手い。

やがて、二人であっさり達してしまい、授業は終わってしまった。

「……ねぇ」

彼の乳首を爪の先で弾きながら、あたしは囁く。

「まだ、一回じゃ駄目ね」

「……やっぱり?」

乳首を敏感に反応させながら彼が答える。

「――また」

「ああ」

暗黙の了解で、授業の延長が決定した。

手放すのは惜しい逸材の、男友達。


fin

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