私、夢咲 亜子(ユメサキ アコ)は、今現在、5年越しの片思いを続けている。

 相手は私の雇い主である、店長の、千葉 司(チバ ツカサ)さん。

 出会いはまず、千葉さんではなく、千葉さんのお店に一目惚れから始まった。

 5年前。まだ短大生だった私は、卒業まじかに、千葉さんの店を見つけたの。

 就職活動中で、企業見学会の帰りのことだった。

 これからやりたいこともなくて、私はどの見学会に行っても、自分の未来を想像することは出来なかった。

 贅沢なんて、言ってられないし、えり好みできる時代じゃないのは理解しているけど、私はその会社で働きたいかと聞かれたら、首をひねりたくなるばかりだった。

 私、これから先、どうなるんだろう……。

 好きな事を仕事に出来るはずはないけど、私の好きな事は何だった?

 なんて、まずそこ? みたいな。

 そんな風に思いながら、歩いてたら、遠目に小さな可愛いお店を見つけた。

 なんとか読み取れた看板には、[Boite du jouet]と書かれていて、私は興味を持った。

 「ボワ ドゥ ジュエ……。おもちゃ箱?」

もう、夕暮れ時で、オレンジの光が、レンガ造りのその店を美しく引き立てていて、私は惹きこまれるように足を運んだ。

 私は店名がおもちゃ箱だから、安直に考えて、おもちゃ屋さんなのかと、思った。

 だけど、店構えは、ぬいぐるみや、ミニカーを売ってるようには見えなくて、私は思わずウィンドウを見たんだけど、そこで商品に一目惚れ。

 「わぁ……」と、息に近い声が出た。

 ショウウインドウに飾られていたのは、アンティークのオルゴールや、レース。

 乙女心をくすぐるような、ものが並んでいて、私の目がキラキラしていった。

 夕日がオレンジに染め上げるアンティーク品たち。

 「か、可愛すぎる……」と、私は人通りが少ないことをいいことに、ショウウインドウにへばり付く。

 ここはアンティーク品を売るお店なんだと、分かって、こんな店があったなんて! と、感動した。

 完璧にお店に一目惚れで、通い続けたいと思えていたくらい。

 店内も見たいけど、ショウウインドウにならぶアンティーク品たちはゼロが一つ間違ってるんじゃないかって、疑いたくなるくらい高額で、とても中に入る勇気はなかった。

 でも、眺めているだけで幸せになれるものが並んでいて、私の顔は自然と緩む。

 こんなところで、働けたらいいなぁって、そんな風に思えた。